認知症(痴呆)への対応
近年、犬も長寿化が進み、認知症(痴呆)にかかるケースが増えてきています。
認知症(痴呆)は外見から判断をすることが難しく、発見が遅れがちです。
以下のような症状が現れた場合、介護例を参考に早めに対応してください。
(医療監修:獣医師 先崎直子)
介護例1 夜中に歩きまわる(徘徊)
徘徊する犬は昼に寝る時間が長くなる傾向があります。
徘徊自体を止めるのは困難ですが、昼夜のバランスを保つことで、夜間の徘徊をある程度抑えられます。
「昼間に眠ってしまったら起こしてあげる」
「昼にしっかりと運動をさせ、疲れさせる」
「日光浴をさせる」
などして、昼夜のバランスを保ってあげましょう。
徘徊が続くと、極度の睡眠不足などで、飼い主の心身に大きな負担がかかる場合もあります。
動物病院・ペットシッター・老犬ホームなどをうまく使い、飼い主の体調を整えることも選択肢として考えてみましょう。
介護例2 夜鳴き(夜泣き)する
認知症(痴呆)による夜鳴きの場合、徘徊同様、昼夜のバランスを保つことで、夜は眠るように促します。
獣医師から睡眠導入剤を処方を受ける方法もありますが、老犬個々の体質もあり、あまり効かなかったり、かえって効きすぎて危険なケースもあります。
処方量が徐々に増え、普段からぼーっとするなどの副作用も出てくるケースが多くあるので、獣医師とよく相談しながら適量を使うようにしてください。
飼い主の不眠や近隣とのトラブルといった深刻な問題がある場合、老犬ホームに預ける、防音室などの介護用品を購入するなどの選択肢も検討しましょう。
老犬ホームの情報はこちら
夜鳴き対策グッズはこちら
介護例3 名前を呼んでも反応しない
聴力や視力の低下による場合もあります。
愛犬の視界に入る場所で、大きくはっきり聞こえる声で、名前を呼んでください。
それでも反応しない場合、認知症(痴呆)により名前を忘れてしまっていることが考えられます。
早めに獣医師に相談しましょう。
認知症(痴呆)の場合、症状を改善することは困難です。
愛犬の新しい個性として受け入れ、付き合ってください。
介護例4 目の焦点が合っていない
目の焦点が合わず、遠くを見ているような表情を見せることが増えた場合、認知症(痴呆)が疑われます。早めに獣医師に相談してください。
飼い主でも急に触ったり、目の前に手を出したりすると、興奮して噛まれることもあります。声を掛けながら愛犬に触れるよう、注意しましょう。散歩時は他人に噛みつくなどの不測の事態が起きないよう、口輪をつけるなど配慮してください。
症状が強く出て、個人で飼育が困難な場合は老犬ホーム等への預け入れも選択肢として考えましょう。
介護例5 ぼーっとしている
老犬になると概しておだやかになり、感情をあまり見せなくなります。
ただし、極端に感情の変化がなくなった場合は認知症(痴呆)を疑い、早めに獣医師に相談してください。
認知症対策として処方された、睡眠導入剤等の副作用でぼーっとすることがあります。
可能であれば、薬の量を減らしてあげましょう。
認知症(痴呆)の場合、症状が改善することは困難ですが、散歩や遊びなどで常に刺激をあたえ、症状が悪化しないようサポートしましょう。
介護例6 急に怒ったり、噛んだりする
愛犬の様子をよく見る、獣医師と相談するなどして、この症状が認知症(痴呆)によるものか見極めてください。
認知症(痴呆)の場合、症状を改善することは困難です。愛犬の新しい個性として受け入れ、付き合ってください。
飼い主でも急に触ったり、目の前に手を出したりすると、興奮して噛まれることもあります。声を掛けながら愛犬に触れるよう、注意しましょう。散歩時は他人に噛みつくなどの不測の事態が起きないよう、口輪をつけるなど配慮してください。
症状が強く出て、個人で飼育が困難な場合は老犬ホーム等への預け入れも選択肢として考えましょう。
介護例7 しつけたことができなくなった
「待て」など、以前はできたことができなくることも、認知症(痴呆)の代表的な症状です。
飼い主の指示が分からない愛犬自身も、辛い心理状態なので、叱ったりせず、愛犬の新しい個性として受け入れ、付き合っていきましょう。
介護例8 食事が終わった直後に食事を要求する
嘔吐や下痢など、内臓疾患の兆候がないか確認し、その兆候がある場合、早めに獣医師に相談してください。
そうでない場合、認知症(痴呆)が疑われます。
過食による肥満を避けるため、ご飯の量を減らし、回数を増やすなどで愛犬のストレスを軽減するようにしましょう。
介護例9 家具や壁にぶつかり後ろに下がれない
後ろの下がる動作は老犬にとって非常に複雑な動作です。
認知症(痴呆)により、脳の機能が低下するとこの動作ができなくなることがあります。
この症状自体を改善するのは困難ですが、家具の隙間をふさぐ、家具にクッションをつけるなどして、愛犬がぶつかってもケガをしないよう配慮しましょう。
ご飯やお水のお皿は壁際に置かないようにしましょう。壁際に置くと食事後、そこから動けなくなります。
介護例10 グルグルと同じところを回っている
認知症(痴呆)ではなく、前庭障害という脳の障害が疑われます。
前庭障害は時間が経過することで症状が自然に改善するケースもありますが、投薬が必要な場合もあります。
早めに獣医師に相談するようにしましょう。
介護例11 認知症(痴呆)の予防
認知症(痴呆)は進行を遅らせることはできますが、発症すると、劇的に症状が改善することは難しくなります。
できるだけ認知症の症状がでないよう、日常生活で次のような工夫をしましょう。
■DHA EPAをあたえる
DHA,EPAは認知症(痴呆)の予防に有効であるといわれています。
サプリメントとして与えたり、DHA,EPAが添加されているご飯を与えることで、補給させましょう。
老犬介護用品(食事 サプリメント)はこちら
■散歩のルートを工夫する
お散歩自体に刺激があり、脳の活性化に有効です。
お散歩のルートを変えると、いつもと違う景色を見たり、匂いを感じられるので、さらに脳にとってよい刺激となります。
■遊んであげる
若い頃に比べると、遊ぶことが減りますが、誘うと喜んで応えることもあります。
かくれんぼ等も頭や五感をフルに使うので、よい刺激となる遊びです。
それ以外にも様々な知育玩具がありますので、それを利用するのもよいでしょう。
■スキンシップをはかる
飼い主とのコミュニケーションは脳に良い刺激となるだけでなく、絆を深めることにもつながります。
できるだけ、話かけたり、なでるなどのスキンシップを図りましょう。
マッサージはスキンシップ効果以外にも、血流を良くし、体の柔軟性を養う効果も期待できます。