老犬の目線で考えるサマーカット
2018.08.26 (老犬ケア)
老犬に少しでも涼しく過ごしてもらいたいという親心から、夏はサマーカットと決めている飼い主も多いようです。サマーカットというと丸刈りのイメージが強く、首から下の被毛が短く刈り込まれていることが多いようです。
犬の目線でサマーカットを考えたとき、涼しく快適で良いことばかりでしょうか?被毛の役割も含めて、サマーカットのメリットとデメリットを考えてみましょう。
ゴールデンレトリーバーやコーギー、ポメラニアンなど、ふさふさの長い被毛が特徴の犬たちも、夏になると「誰?」と印象が変わってしまうほど、しっかり刈り込まれたサマーカットが施されることがありますが、本来、犬の被毛には、それなりの理由があって長い毛を持ちます。
〇強い陽射し(紫外線)から皮膚を守る
犬は日焼けを必要としません。肌を露出している人間と違って、犬の皮膚は被毛で守られていることから、紫外線に弱く、強い日光を浴びると日光性皮膚炎(日焼け性皮膚病)を起こす場合があります。紫外線を浴びないことが一番ですが、健康を保つためにも外遊びや散歩はとても大切で必要なことです。ただ、その際に肌を守るはずの被毛が短く刈られていると、皮膚に紫外線が届いてしまうことになります。
日焼けをすることでフケが増えたり、脱毛したり、慢性化すると色素沈着や潰瘍などから、扁平上皮癌に進行することもあります。
コリーノーズともいわれる日光性皮膚炎はコリーやシェットランドシープドッグ、ボーダーコリー、シェパード、ハスキーなどが好発犬種といわれています。とくに鼻の周りに疾患が起こりやすいようです。寒冷地原産の犬は遺伝的にメラニン色素が少ない傾向にあり、長時間日光に当たると発症しやすいようです。毛の白い犬にも起こりやすい傾向があります。
皮膚を紫外線から守るためにも、屋外で活動することが多い犬のサマーカットはよく考えてから施術するようにしましょう。
〇体温調整をする
犬の被毛は断熱材の役割をしています。汗をかかない犬の体温が上がり過ぎないよう、被毛の中に空気をいれて層をつくり、日光が皮膚に届かないよう工夫されているのです。被毛があるから暑さに耐えられるといえます。
さらに冷房の効いた室内では、体温の下がり過ぎを防ぐことができます。愛犬が快適に過ごすために、あるべき被毛は大切なのです。
〇虫刺されを防ぐ
夏は害虫が増える時期。ノミ、ダニ、蚊、ブヨなど様々な害虫から皮膚を守る必要があります。サマーカットで肌が露出していると、虫刺されや寄生される危険が高く、痒みで掻いてしまうことから肌が傷つき、化膿することがあります。
■老犬に優しいサマーカットとは
被毛の役割を理解すると、犬にサマーカットは必要ないということがいえるでしょう。ただ、それでもサマーカットをしたいという場合は、短く刈り込むのではなく、被毛をすいたり、毛の長さを整えるだけでも被毛を軽くすることはできます。長毛の場合、毛先を少し短くするだけでも、空気が通しやすくなり、蒸れを防いで皮膚病予防になります。
■サマーカットで毛質が変わる
サマーカットで短く刈り込むことで、次に生えてくる毛が以前の毛質と変わってしまう場合があります。割合的には低いですが、毛が生えてこなくなる犬もいるようです。犬の毛質にもよりますが、ダブルコートの犬を丸刈りにした場合、上毛と下毛の伸びる速さが違うので不格好になることもあります。
犬の皮膚はとても薄く、人の1/5程度の厚さしかありません。また毛包1つに毛が10本前後生えていて、密度が高くなっています。人は毛包1つに毛が1本ですから、人と比べても毛の密度がわかります。
皮膚の薄さと毛の密度から、人の丸刈りと犬の丸刈りはまったく違う性質のものです。バリカンで受けるキューティクルのダメージや紫外線を浴びたことによる皮膚の変化などが原因となって、犬の毛質が変わってしまうといわれていますが、はっきりとした原因は不明のようです。
■まとめ
サマーカットは犬にとって良いことばかりではないようです。残暑も気になりますが、毛が伸びるのに時間がかかることから、そろそろサマーカットは避けた方がよいでしょう。サマーカットを施すときは、トリマーや獣医師に老犬の生活環境と体調などをよく相談してから施術することをおすすめします。
(医療監修:獣医師 先崎直子)
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