気をつけたい老犬の咳
2018.11.05 (老犬ケア)
すっかり秋めいて、紅葉や初冠雪の便りも聞こえてくるようになりました。
この時期、人も体調を崩しがちですが、老犬も同じように気温差や空気の乾燥で体調に変化が生じることがあります。
今回は、気をつけたい「老犬の咳」について詳しくお話します。
■気温の低下と乾燥によって悪化する呼吸器の疾患
秋は湿度が低くなり、カラッとしたお天気が気持ちよい季節です。ただ、その分、空気は乾燥して気管を傷めやすく、冷たい空気は咳の原因になることもあります。
特に、秋になると早々に暖房器具を使い始める地域もあって、室内の乾燥は一層進みます。この乾燥が咳の一因になることがあります。
咳が続くと、老犬は体力を消耗し、体調まで悪化してしまうこともありますから、咳を和らげるように、生活環境を工夫してあげましょう。
快適に過ごせる室内環境は、温度は20~25度、湿度は40~60%程度が良いとされています。換気や加湿器をうまく使って湿度を調整し、犬種によっては暖房で暑さを感じてしまう犬もいるので、人は上着などで調整して、お部屋を暖めすぎないように注意しましょう。
■長く続く咳は要注意
軽い咳であっても、長く続いたり、咳き込んだり、咳の原因になりそうなものを取り除いても改善がみられない場合は早めに動物病院を受診しましょう。咳の原因は様々あり、重症化する病気もありますから、早めに対処して、原因と対処を考える必要があります。
◆気管虚脱◆
小型犬や老犬に多くみられる症状で、アヒルのようなガーガーという独特の咳をします。肺に空気を送る気管が変形したことによって呼吸に合わせて一部の気道が狭くなることが原因で、引っ張り癖で長い間気管に圧力がかかり、重症化することもあります。早めに病気に気づけば、薬や運動を制限することで、症状を軽減することができますが、放置しておくと気管の炎症が悪化し、気道がより狭くなって呼吸がつらくなり、ひどい場合はチアノーゼや呼吸困難で失神することもあります。
気管に負担がかからないよう、首輪を避けて胴輪(ハーネスタイプ)を利用するなど、老犬の負担にならないようお散歩道具も工夫しましょう。
◆ケンネルコフ◆
犬の風邪と呼ばれる感染症で「犬伝染性気管支炎」です。細菌やウィルス、マイコプラズマによる飛沫感染や接触感染で広がる病気です。健康な成犬なら感染しても2週間程度で自然治癒することもありますが、子犬や老犬は肺炎を発症するなど、重症化しやすいので注意が必要です。
◆寄生虫が原因になる◆
フィラリアの感染や回虫症など、寄生虫が原因になって呼吸に影響がでることがあります。回虫症は幼虫が肺に侵入することによって、咳や喘鳴など呼吸が浅くなることもあります。
◆心臓病◆
とくに老犬は心臓が弱くなり、心不全などを起こしやすくなる傾向があります。心臓肥大が進むと、気管が圧迫されて乾いた咳が続き、呼吸困難や失神することもあります。早期に発見して、塩分を控えた食事療法や運動量やお散歩時間など、心臓に負担をかけない生活を心がけることが必要になります。太らせないように体重管理することも大切です。
他にも、アレルギー、肺炎、肺の腫瘍などによって咳が出ることがあります。
■愛犬の咳に気づいたら
人もそうですが、犬が咳をするということは、なにか体に異変が生じているということです。様子をみるなど静観することなく、できるだけ早く病院を受診して、咳の原因を特定しましょう。病気の早期発見は、老犬の体の負担を軽くすることができます。
生活環境も老犬に合わせ、加湿器を使ったり、ウィルスを除去する空気清浄機を使ったり、健やかな毎日を過ごしましょう。
(医療監修:獣医師 先崎直子)
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