車いすで変わる老犬の生活
2019.05.22 (老犬ケア)
老犬の介護用品もずいぶんと充実してきましたが、最近注目されている道具のひとつに車いす(歩行器)があります。四肢に何らかの支障が出た時、自力で動けない状態から、2脚をサポートすることで再び元気を取り戻すことができる補助道具です。
車いすを使うことで老犬にはどういった効果が得られるのか、まとめてみました。
■ 歩行困難になる原因
老犬でなくても、愛犬が突然歩けなくなることがあります。ついさっきまで元気に走っていたのに、突然座り込んだまま動けなくなったり、動けても歩伏前進のような状態になってしまいます。
犬が歩けなくなる原因は以下のようにいくつかあります。
・椎間板ヘルニア
・股関節形成不全
・変性性脊髄症
・脳梗塞などの脳疾患
・老化や病気による筋肉の減少や衰え
・事故による脊髄損傷や足の欠損
・神経の麻痺
病気や事故など、さまざまな原因がありますが、症状や状態に合わせて体に合う車いすを使えば、今までのように自由に動き回ることも可能になります。
■歩けることによる効果
人は自分が動けなくなった理由を医師の診断などで理解することができますが、犬は自分の足が不自由になったことを理解できません。
できていたことが急にできなくなるという不便さからパニックを起こしたり、動けないことを理解できない分、なんとか動こうと無理をして悪化させたり、自由にならないことでストレスを溜めてしまうこともあります。
2脚が動く場合は2輪サポートの車いすを用意してリハビリをすれば、再び自由に歩くチャンスが生まれます。自分で体を起こすことができない犬であっても、4輪サポートの車いすを使えば、少しずつでも動かすことできるようになります。
車いすを利用する効果は症状によっても様々あります。
・正しい姿勢で足を動かすことで、神経の伝達がよくなる
・歩いていた感覚を取り戻し、精神的に落ち着く
・体を動かすことで麻痺している部分に刺激を与え、リハビリになる
・無理なく散歩ができるので、飼い主の負担が軽くなる
・散歩で外の空気を吸ったり匂いをかいだり、自由に動けてストレスが解消される
・筋力がアップされる
・麻痺があっても足を動かそうとすることで脳に刺激が与えられる
このように、車いすで自由に動くことができるようになると、身体的にも精神的にもたくさんのメリットがあります。 近年ではカートセラピー(車いす療法)という言葉があるほど、車いすを活用する病院や老犬ホームが増え、リハビリにも効果が期待されています。
犬の歩きたいという気持ちと実際に歩けているという実感は、心と体のバランスを取り戻し、落ち着きが生まれるので、今までと同じリズムで生活することが可能になります。
車いすでの生活に慣れるためには室内を動きやすいように整理したり、外での練習をしたりといったことが必要ですが、順応性の高い犬はすぐに慣れ、自由に散歩を楽しんでいたころの感覚を取り戻すようになります。
少しでも苦痛の少ない生活を送るために、介護の一つの方法として車いすの活用を選択肢の一つとして頭に入れておくと良いでしょう。
(医療監修:獣医師 先崎直子)
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