施設訪問記 Familio(ファミリオ)
2019.06.07
大阪府茨木市にある老犬ホーム「Familio」を訪問し、オーナーの森下さんと、事務全般を外部受託している古川さんにお話を伺いました。
元は介護士だったというオーナーの森下さんは、ボランティアで犬の保護活動を行ってこられました。古川さんは社労士として顧問に就いた障碍者の福祉施設で、職員として入ってきた森下さんと知り合ったのが始まりだったそうです。
介護のお仕事は体力勝負のため、年を取っても続けるのは難しいと考えていた森下さんが、次になにをやろうか考えた時に頭に浮かんできたのは、長く続けていた犬の保護活動。保護犬の預かりボランティアとして、様々な理由で飼えなくなったり、捨てられてしまった犬をたくさん見てきた経験から、自分でも預かり施設を作れないかと思うようになりました。
とはいえ、経営などの難しいことは何も分からず、森下さんは自分がオーナーになる気は全くなかったそうです。しかし、森下さんの保護活動の経験、目的意識やコンセプトの明確さから古川さんが事務的なサポートを申し出て、施設の開設を後押ししました。
「森下さんには細かいことを考えずにやってもらって、私が後からボロボロこぼれ落ちるものを拾って回収していく感じですね。」
施設を経営していく上での事務処理からホームページの作成まで、後方支援を一手に引き受ける古川さんは森下さんからの信頼も厚く、お互いに意見を言い合える対等な関係。
「頑張ってワンちゃんの世話をしたいんだけど、事務のやり方がよくわからない、面倒という人がいたら、こんな風にアウトソーシングする方法もあるんだよという一つのモデルケースにもなると思います。」と古川さん。
経営に関しては、古川さんが「企業として維持できること」を軸にブランディングや価格設定をされているとのこと。命を預かる仕事だからこそ、責任を持って長く継続できる体制にしなければなりません。きちんと商売として成り立つよう、しっかりとしたサポートを行っています。
「ただ単に高級路線を狙うとか、儲けのためにではなく、飼い主さんに安心して預けてもらえるように施設のイメージを保つのは大切だと思っています。ケージフリーですとか、自宅にいるような寛ぎのある空間にしてFamilioらしさを出しています。」
施設の内装や設備については、森下さんの意向が大きく反映された造りになっています。
自宅にいるようにリラックスして欲しいと「普通の家庭」をコンセプトにしてはいるものの、中に壁はほとんど作らず、空間に死角ができないようにしたそうです。不要な事故が極力起きないような造りの物件を探した中で偶然見つかったのが、元は作業場だったという今の建物でした。
「物件選びは安全管理ができるかというのを一番の条件に探していました。ここはたまたま見つけた場所なんですが、インターが近くて車の便がいいし、動物病院も近くにあって本当に良いご縁でした。」と当時を振り返ります。
「細かいことを考えるのが苦手なんですが、最初の施設を造る段階では照明の位置から何から全部一から考えなくてはいけなくて大変でした。でも、施設がオープンしてからは面倒なことは全部古川さんが受け持ってくれるので、今は預かった子のお世話に集中できて楽させてもらってます。笑」
もともとは人間の介護施設に関わっていたお二人の経験から、老人ホームだったらこんな風にするだろうと置き換え、日々のお世話を試行錯誤しているとのこと。
他の施設でうまくいかなかった子もノビノビと過ごすことができ、「Familioじゃないと」というリピーターの方もたくさんいらっしゃるそうです。
「人間の介護も、犬の介護も一生懸命やる人こそどんどん疲れてしまうんですよね。人間の方は今は色んな介護施設がありますが、犬も同様に信頼できる老犬ホームやデイサービスに預けることが普通になって欲しいと思います。」と森下さん。
施設に預けることで飼い主さんのリフレッシュになる他に、ワンちゃん自身もちょっと違う環境に行くことで刺激を受けて元気になるケースもあるのだとか。お互いにリフレッシュして良い距離を保つための選択肢の一つとして利用して欲しいといいます。
将来は施設をオープンにして保護活動のためのシェルターを作りたいという森下さんに、そのための道筋を考え、徐々にでも前に進んでいけるようにしていきたいという古川さん。
老犬の介護に無理は禁物ですが、老犬ホームの経営にも無理なく続けられる体制が必要です。お互いに得意分野を活かして補い合う運営として、これからの老犬ホームの新しい形を見せていただきました。
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