抜け毛や皮膚トラブル「クッシング症候群」かも?
2021.10.29 (老犬ケア)
抜け毛や皮膚の黒ずみ、筋肉量の低下など…。年齢のせいかなと見過ごしてしまいがちなその症状、もしかしたらクッシング症候群かもしれません。
ホルモンの過剰分泌により引き起こされるという「クッシング症候群」とは、どんな病気なのでしょうか?
■ クッシング症候群とはどんな病気?
腎臓のそばにある副腎という臓器から、コルチゾールと呼ばれるホルモンが過剰に分泌されることによって起こる病気です。副腎皮質機能亢進症とも呼ばれています。
【具体的な症状】
・多飲多尿
・お腹が膨れる
・皮膚トラブル
・抜け毛
・筋肉が痩せてくる
飼い主さんが気付きやすいのは「多飲多尿」の症状。なお、「多飲多尿」とは一日あたりの飲水量が体重1㎏あたり100ml以上、一日あたりの尿量が体重1㎏あたり50ml以上を基準に判断します。以前と比べ、明らかに飲む水の量が増え、排尿量も増えたら注意が必要です。
皮膚は薄くなり血管が透けて見えるほどになります。さらに脱毛によって地肌まで見えてしまうことも。皮膚全体が黒ずみ、かたくて白いものができるなどの症状が見られることもあります。
また足の筋肉が弱くなり、散歩に行きたがらないという症状も現れます。どれも年齢のせいと思われがちな症状のため、老犬の飼い主さんは注意が必要です。
■ クッシング症候群の原因とは?
クッシング症候群の原因のほとんどは脳下垂体または副腎にできる腫瘍が原因です。
副腎にホルモンを出すよう指令している脳下垂体に腫瘍ができることで、ホルモンが過剰分泌されてしまいます。もしくは副腎自体に腫瘍ができることでコチゾールが過剰分泌されてしまうことが原因です。
■ クッシング症候群の治療法は?
クッシング症候群が疑われた場合は、ACTH刺激試験などの血液検査でコルチゾール値を測定します。さらに超音波検査で副腎における腫瘍の有無やCTやMRI検査で脳下垂体における腫瘍の有無を調べます。
▼ 脳下垂体に腫瘍がある場合
【投薬】
腫瘍が小さい場合は内服薬での治療となります。完治する治療ではないため、生涯にわたって薬を飲み続ける必要があります。
薬が効きすぎると逆に副腎の機能が低下してしまうことがあるので、慎重な投与が必要となります。
【外科手術】
腫瘍が大きいときは、内服薬以外に放射線治療や外科手術による摘出が選択されることもあります。ただし、脳下垂体の手術は難しく、手術を受けられる病院は限られています。
▼ 副腎に腫瘍がある場合
【外科手術】
外科手術で腫瘍を切除しますが、簡単な手術ではないので、内科的な治療が行われることが多いです。
腫瘍が良性であれば寿命まで元気に過ごすことができるケースも多いですが、悪性の場合は完治が見込めないことも。ほかの臓器に転移している場合は、手術ができない場合もあります。
◾️ まとめ
聞き慣れない「クッシング症候群」という病気。加齢による体の変化に近い症状が見られるため、日頃から注意深く愛犬の様子を観察するようにしましょう。
なお、犬種を問わず加齢とともに発症しやすいのが特徴です。犬によっては糖尿病を併発することもあるため、症状が気になったら、早めに動物病院を受診しましょう。
(医療監修:獣医師 先崎直子)
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