施設訪問記 フォレストドッグケアセンター
2022.10.14
千葉県袖ヶ浦市にあるフォレストドッグケアセンターは、終末期の緩和ケアを目的としたホスピスを併設する老犬ホームです。これまで動物の治療の現場で活躍してきた獣医師が集まり、老犬が穏やかに暮らせる看取りのための施設として設立されました。
代表の田村さんは、神奈川県川崎市にある動物病院の院長である獣医師で、川崎市獣医師会の会長も務められています。オープンして3年になる施設を訪問し、設立までの経緯や思いについてお話を伺いました。
施設が建つのは、川崎と木更津を結ぶアクアラインで都心からのアクセスが良く、自然の中でのびのびとできるようにと選んだ場所。フォレストという名前の通り、緑豊かな場所に建つヨーロピアンスタイルの建物には、お預かりスペースや診察・治療室の他に、面会に来た飼い主さんがくつろげるカフェも作りました。
下半身が弱って固い地面の上では歩けなくなっていたのが、柔らかい土の上では歩ける愛犬を見てビックリする飼い主さんもいるのだそう。ワクチンを打ちに来たついでに犬は遊べて、飼い主さんはゆっくりくつろぐという風に日常的に利用される方もいらっしゃるようです。
広い施設ですが、老犬ホームとしてお預かりする目安は最大でも10頭程度で、それぞれの子に合わせたオーダーメイドのお世話を心がけています。
ホスピスでは、延命にこだわるよりもいかに快適に最期を迎えられるかを飼い主さんと話し合い、獣医師としてできることを最大限に活用していけるようにしています。
現在常駐している獣医師はアロマや漢方などの代替医療の経験もあり、科学医療だけでなく様々な選択肢を提案できる環境にあるとのことでした。
施設内には看取りのためのお部屋があり、最期の時間は飼い主さんと一緒にお別れができる環境を整えています。
人間と同じように、犬の終末期医療にも目を向ける獣医師はだんだん増えているといいます。田村さん自身も一人の飼い主として愛犬が苦しむ姿を見るのは心苦しく、苦痛はできるだけ取り除いてあげたいと話します。
獣医師がいる施設であれば薬を使うこともでき、犬も飼い主さんもストレスのかからない穏やかな最期を迎えることができます。
ここ数年で老犬ホームの数は少しずつ増えてきましたが、田村さんはその中でも「獣医師としてできることは何か」ということを10年以上前から考えてきました。
子犬の頃から一緒に暮らした愛犬が年をとって亡くなり、気を落とした飼い主さんが新しい子を飼いたくても、自分の年を考えると飼えないと残念そうにする場面に立ち会う獣医師はとても多く、そういった状況を何とかできないか、同じ考えを持つ医師たちと話し合いを重ねてきました。
田村さんは、高齢者がペットを飼うことについて、もっと獣医師会からの後押しが必要なのではないかと考えています。
高齢者がペットのお世話をすることが生活の潤いや長寿につながることは様々な事例や研究結果によって示されています。 しかし、60歳で子犬を飼い始めたとして、20年経つと飼い主さんは80歳。愛犬の介護が必要になったとき、高齢の飼い主さんにできるのか。もしそれができなかった場合の受け皿が必要ではないか。
その受け皿として作った施設がこのフォレストドッグケアセンターです。
現在は動物愛護センターと協力しながら、譲渡後のチェック体制を作ることで年齢制限を緩和できるような仕組みづくりに取り組んでいるそうです。
「60歳以上の人はむしろ積極的に飼って!と声を大にして言いたいです」という田村さん。行政に対しても獣医師会の先生方が協力して、それが後ろ盾としての信頼を得られれば、今まで断られた人たちもペットを迎えられるようになり、お互いが幸せになれるのではという思いがあります。
動物を飼うのに不安がある飼い主さんには、「獣医師はほぼ100%動物好きなので、遠慮せず相談してほしい」とアドバイスをいただきました。診療ではなくただ単に相談するというのはなかなか敷居が高く感じますが、獣医師側からしてみればどんどん相談してほしいといいます。
ペットは人生を一緒に歩むパートナーとして大きな存在となっている人も多いでしょう。一緒に過ごす時の充実感はかけがえのないものであり、飼い主さんには老後もペットとともに幸せな時を過ごしてほしいというメッセージもくださいました。
飼い主さんとペット両方の老後を考える上での貴重なお話を聞けた今回の訪問となりました。
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