施設訪問記 ワンコ・ワークス
2023.03.31
静岡県袋井市にあるペットホテル「ワンコ・ワークス」を訪問し、代表の飯嶋さんと主任訓練士を務める西川さんにお話を伺ってきました。
ワンコ・ワークスは訓練士が常駐しているペットホテルです。
老犬に特化した施設ではありませんが、問題行動のある犬や介護が必要な犬など、普通のペットホテルでは断られてしまう犬もお預かりできるホテルとして運営しています。
飯嶋さんがペットホテルを始めたきっかけも、自分の犬を安心して預けられる場所が欲しいという理由からだったとのこと。どんな犬も例外なく受け入れてもらえて、更に飼い主さんと同じようにかわいがってもらえる場所があるというのは、特に手のかかる犬と暮らす飼い主さんにとってとても心強いですね。
子犬から老犬まで様々な犬を一緒に遊ばせる環境にあるため、老犬を家に置いて全く刺激がないよりも、ここに来た方が元気を取り戻す場合もあるそうで、毎日朝預けて、お仕事が終わった後に迎に来るという託児所スタイルで利用されている方もいます。
旅行中に預けたいという飼い主さんも、愛犬がスタッフや他の犬たちと楽しく過ごしてくれることで、自分だけ出かけてしまうという罪悪感がなくなるように、人も犬もみんなが幸せになる施設を目指しています。
「人も犬も幸せに」という理念は、飼い主さんと犬たちだけでなく、スタッフにも当てはまります。
現在施設の主任訓練士を務めている西川さんは、アルバイトとして働き始めた当初、他の施設にはない「犬とただ遊ぶ時間」があるのに驚いたといいます。
ワンコ・ワークスではスタッフの人数を少し多めに配置しているため、仕事に追われるだけでなく、何もない時間をあえて作るようにしています。そこでただ犬の隣に座って撫でて遊ぶ時間が、スタッフや犬たちの癒しの時間になっているのです。
「仕事に追われてしまうと視野が狭くなってしまうので、立ち止まって撫でる時間は絶対にあった方がいいですね」という飯嶋さん。毎日の介護に追われる飼い主さんにも、困った時に頼れる場所になりたいと語ってくれました。
飯嶋さんが大切にしているのは、犬や飼い主さんとの信頼関係。どういう施設なのか、だれが世話をするのかなど、日頃から人間関係を築いて信頼される存在になっていきたいとのこと。
普段からペットホテルを利用していた犬が急に病気を患ったり、障害を抱えてしまったとしても「あの人がお世話してくれるなら」と飼い主さんから安心して預けてもらえる関係を築けるよう心がけています。
アメリカで訓練士の資格を取得した飯嶋さんは、飼い主さん向けに躾の教材を作ったり、講演を行ったりといった活動もしています。
犬の躾というと、「厳しい訓練をさせてかわいそう」といったイメージが強いものですが、実際には嫌がる犬に強制する訓練は推奨されていません。
飯嶋さんの教材では、犬とはどういう動物なのか、なぜ問題行動をするのか、飼い主さんはどう対応すべきなのかといったことを伝え、飼い主さんが「正しく可愛がる」方法を教えています。
飯嶋さんは「日本ではまだ、どういう風に訓練するかというHow toばかりで、飼い主さんが犬のことを学ぼうという視点が少ない」と感じています。
ワンコ・ワークスで訓練を受ける犬は必ず飼い主さんも一緒に来て、訓練についてだけでなく、犬のことについても飼い主さん自身が学び、家に帰ってからちゃんと指示ができるようにしているそうです。
犬と飼い主さん両方に指導するワンコ・ワークス流の訓練がもっと広がって欲しいと、訓練士を目指す学生のインターンや、施設立ち上げを予定している企業研修も請け負っているとのこと。
飼い主さんの「困った」を解消できる訓練士がこの活動を通じてどんどん増えていって欲しいですね。
インタビュー中、飯嶋さんは「獣医さんは犬の体の健康を守って、訓練士はこころの健康を守るのが仕事だと思っています」と語ってくださいました。
老犬になると体のマイナートラブルが出てきて、飼い主さんは日常のお世話に困ることも多くなるかと思います。そんなときのために、かかりつけの獣医さんの他にも相談できる犬の専門家を見つけておくとよいそうです。
医師の治療的な観点の他にも様々な視点からアドバイスをもらって、愛犬に一番良い方法を選んであげて欲しいとアドバイスくださいました。
最後に、老犬になる前に躾を行うことの重要性について伺いました。
飯嶋さんは「躾の目指すところは相互理解」といいます。要介護になったときに重要なのはお互いの行動に対する理解と信頼関係なのだとか。
感情で動いてしまう犬は、ちょっとしたことで不安になって噛んだり吠えたりしてしまうため、若いうちから躾を行って、我慢を教えてあげたり、人間に対する信頼を育てることで、将来の介護がぐっと楽になります。
飼い主さんも、犬がどういう気持ちでいるのかを知ることで適切な対応をとることができ、お互いにストレスを最小限に抑えることができるでしょう。
「そろそろ足腰弱ってきたかなというタイミングなら、介護に向けてまだ出来る事がたくさんある」とのこと。若い頃と年老いてからでは愛犬へのアプローチ方法もかなり変わってきます。飼い主さんも広い視点をもって、愛犬にとってベストな環境を整えてあげたいですね。
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