天国に旅立ったはな子 動物に注ぐ愛情
2016.06.21
5月26日、国内最高齢記録のゾウ、東京井の頭自然文化園のはな子が天国に旅立しました。
はな子は今年69歳を迎えたところでした。
アジアゾウのはな子は、1949年タイと日本の友好のシンボルとして恩賜上野動物公園に来日します。
すぐ後に来日したインドゾウのインディラとともにゾウブームを巻き起こし、はな子は東京近郊を移動動物園で巡るようになります。
そんななか、はな子を見た三鷹市や武蔵野市からはな子の展示を求める声が上がり、1954年井の頭自然文化園に移動することになります。
しかしこの2年後、悲しい事故が起きます。
深夜に酔っ払ってゾウ舎に侵入した男性を死なせてしまったのです。
さらに4年後には、飼育員を死なせてしまう事故も起き、はな子は殺人ゾウと呼ばれ、鎖に繋がれてしまうことになります。
来園客から石を投げられたこともあり、はな子はストレスで心を病み、やせ細ってしまいました。
飼育員の事故から2ヶ月後、山川清蔵(故人)さんがはな子の飼育係となります。
やせほそったはな子を見た山川さんは、はな子を鎖から外してあげることにします。暇さえあればゾウ舎でスキンシップを図ったり、運動場に出してあげたりと、人間不信になったはな子の心を開く努力を惜しみませんでした。
それでも、はな子が山川さんの手をなめるまでには6年、元の体重に戻るまでには8年もかかったそうです。山川さんは退職までの約30年にわたり、はな子のお世話をし続けました。
そして、山川さんの退職後、はな子のお世話は息子の山川宏治さんが引き継がれます。
宏治さんも、はな子に対する愛情の深さは変わりませんでした。
やがてはな子は年老いて、歯が抜け落ち、左下の1本を残すだけになってしまいます。
そんなはな子のために、宏治さんは様々な工夫を施します。
食事は、バナナやリンゴなどを細かく刻んだものや、噛まなくてもよい桃のシロップ漬けなどにしました。最初はなかなかうまくいかず、食事は飼育員泣かせだったそうです。
ストレスを与えないよう展示時間も短縮しました。
年老いたはな子は、筋力が弱り、横になると立ち上がれなくなるため、立ったまま眠るようになります。宏治さんは、ゾウ舎の扉を毎朝開けるたび、そんなはな子が元気に目覚めているか心配に思っていたそうです。
老犬、老猫の飼い主のみなさんも、大切なパートナーが幸せな余生を過ごせるよう願う気持ちは、山川さん親子の想いと同じでしょう。
はな子とは飼育環境も動物種も違いますが、私たちの身近なペット、犬や猫なども年老いていくと、体の状態にあわせた工夫が必要になります。老犬、老猫と共に暮らしていくためには食事やストレスの軽減への工夫、寝たきりの場合は床ずれ防止の仕方など考えてあげるようにしましょう。
はな子は幸せな余生を過ごせたのでしょうか。
本当に世界一悲しいゾウだったのでしょうか。
この後、SNSから発信され世界を巻き込むはな子の騒動が起こります。次回コラムでは、その騒動から動物との暮らし方について考えます。
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