老犬の歯石除去
2018.09.05 (老犬ケア)
老犬でなくても気になる愛犬の口臭。日本で飼育されている3歳以上のワンちゃんの約8割が歯周病など何らかの口腔トラブルを抱えているといわれています。歯周病予備軍も多く、飼い主が気付かなければ歯石や歯肉炎は放置されがちです。
愛犬のお口ケアは見過ごしがちで、毎日歯磨きをしている飼い主は少ないのではないでしょうか。しかし、口腔トラブルを放置すると症状はどんどん悪化し、歯石や口臭の問題だけでなく、歯周病菌は健康にも重大な影響を及ぼしかねない恐ろしい菌です。
放置すれば歯石の上を覆っている歯垢中に存在する歯周病菌により歯周病は悪化し、歯肉が腫れて痛みが出たり、歯が抜けてしまうこともあります。さらに、膿が溜まると膿性鼻汁など、口内だけでなく様々なところに影響がでます。
口腔内の環境を良くすることは愛犬の健康を維持するために欠かせません。歯についてしまった歯石は残念ながら歯磨きでは落ちません。歯石や歯周病のケア方法として歯石除去があります。近頃、麻酔を使わずに施術する「無麻酔歯石除去」が話題です。たしかに、老犬に全身麻酔を使うことは抵抗や不安がありますが、無麻酔での施術はどうでしょうか。メリットとデメリットをまとめてみました。
■従来の歯石除去手術とは
歯石除去や歯周病の治療を行う場合、従来は獣医師によって全身麻酔で行われてきました。
全身麻酔での施術のメリットは、短時間で口の中をケアできるというところにあります。また、歯茎の歯周ポケットに溜まった汚れを取り除き、歯周病菌をしっかりケアできるというメリットがあります。歯周病の原因は歯石ではなく菌なので、歯石を取るだけでは改善されない場合があります。進行を止めるためにも、歯周ポケットに溜まった汚れと菌をしっかりと除去することが大切です。
しかし、老犬の多くは体力が落ち、持病を持っている場合もあります。そのような犬に負担のかかる全身麻酔を使うことは不安もあります。全身麻酔での施術が必要な場合は、他にケアする方法がないかを獣医師にしっかり相談して、納得した上で行いましょう。
■無麻酔歯石除去のメリットとデメリット
無麻酔で口腔ケアを行う場合、一番のメリットは麻酔を使わないということで体への負担を軽減できます。ただ、意識のある犬の口の中を施術するという無麻酔除去方法は、デメリットもあります。
まず、獣医師でない人が施術を行う場合、歯石を除去したとしても、その後の歯周病の治療や歯周病を予防するための処置を行えないことがあります。
大人しい犬であっても長時間口をあけていることは苦痛です。また、口の中に器具を入れられることも好まないでしょう。そのため、精神的にストレスがかかり、暴れることや抵抗することもあります。
また、口を押えられてしまうので、呼吸器疾患のある犬には不向きで、血圧が上がることもあるため心臓疾患のある犬にもストレスを与えることになります。こういった疾患のある老犬にとっては、麻酔を使うことも、使わないこともデメリットといえるでしょう。
無理やり押さえることで、首や腰を痛めたり、顎の骨折なども報告されているようです。また、歯石を取るためのスケラ―は鋭利なので、口の中を傷つける恐れもあります。動いたり暴れたりする犬の歯の裏側や歯周ポケットまでケアすることは困難ともいえます。
■まとめ
麻酔を使う、使わない、どちらにしても老犬に負担がかかります。こういった事態にならないよう、歯垢や歯石を溜めないようにする、毎日の歯磨きやお口ケアをしっかり行いましょう。
口の中にトラブルを抱えてしまったら、獣医師とよく話し合い、どういったケアが愛犬にとってベストな選択か、よく検討を重ねることをおすすめします。
(医療監修:獣医師 先崎直子)
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