老犬介護と仕事の両立
2019.03.27 (老犬ケア)
近年、他人事とは思えない介護問題がニュースで取り上げられることがあります。これは人の社会問題だけでなく、老犬やペットの介護で起きる飼い主の問題としても気になる話題です。
室内飼育や食生活の改善、フィラリア対策やワクチンの普及など、飼い主の意識向上とペット医療が充実し、犬も猫も長生きをする時代になりました。それはとても良いことなのですが、同時に様々な問題があることも事実です。ペットの老化によって起きる介護問題を考えてみます。
■ 人とペットの平均寿命と健康寿命
平均寿命とは生きている期間の平均値ですが、健康寿命は人の場合「平均寿命から日常的・継続的な医療・介護に依存して生きる期間を除いた期間」と定義されています。
これからの時代、いかに長く生きるかというよりも、健康上や生活に支障がなく生涯生活していくかが大切という意識に変わってきています。
厚生労働省の2016年の調査では、人の平均寿命と健康寿命の差は男性で8.84歳、女性で12.35歳となっています。いくら寿命が延びたといっても、健康的に過ごせていない期間が長くては意味がありません。
それと同様に、ペットも平均寿命は延びていますが、闘病や介護が必要な期間が長くなると、飼い主の生活に負担がかかる場合があります。
【ペットが健康的に生活できている定義】
- 心理的、生理的に自立している
- 自分で食べる
- 歩ける
- 排泄の管理ができる
- 飼い主とのコミュニケーションが可能
(出典:日本獣医師会雑誌 第64巻 第1号「家庭動物(犬猫)の高齢化対策」)
これらを考えると、人のように会話ができない老犬の介護になると、痛い場所や辛いところを伝えあうコミュニケーションが難しい分、飼い主は不安を感じたり、難しさを感じたりするところは大きいと言えるでしょう。
■ 便利なグッズを活用する
直接的な介護が必要でなくても、日中の様子が心配で気がかりだという飼い主にとっては、ペット見守りカメラなどがとても重宝されています。
単にカメラで映像を確認するだけでなく、室温のチェックや声かけができる機能で離れた場所から老犬を見守ることが可能です。
■ 家族の協力とプロの協力、周囲の理解を求める
大切な愛犬や愛猫の介護で仕事を辞めようかと悩む飼い主もいるようですが、仕事を辞めてしまう選択の前に、周囲に理解と協力を求め、仕事と介護を両立させる道もあります。
職場によっては「ペットの介護で仕事を休むなんて!」と理解されにくいこともあるかもしれませんし、当然ペットの介護は法律で定められている「介護休業」の定義にも該当しません。仕事を休む場合は、有給休暇を利用し、ペットの通院や介護の時間に充てることができます。
有給休暇は日数に限りがありますから、家族や友人に手助けしてもらったり、時にはペットシッターやペット介護施設の1日預かりなどを利用したりして、飼い主が自由に過ごせる時間を持つことも大切です。
介護は一人で抱え込まず、周囲に協力を求めることで、精神的にも肉体的にも余裕を持つことができます。介護は短期間で終わるものではないため、飼い主に気持ちの余裕を持つことが、愛情を込めて介護を継続するために必要です。
■まとめ
最近は、有給休暇の他に「ペットに使える特別休暇」を導入する企業も増え、介護や忌引きに利用できる企業もあるようです。ペット関連企業に多くみられますが、今後はペットが家族と認められ、飼い主にとっても見守りやすい環境が整う職場が増えることを期待します。
(医療監修:獣医師 先崎直子)
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