水中毒にご用心
2019.07.24 (老犬ケア)
暑い日の散歩中、お水を夢中で飲んでいる犬の姿を見かけます。海や河原では水遊びを楽しむ姿も。最近はドッグランでもプールが人気になり、設置する施設が多くみられるようになりました。
暑い日はとても楽しい水遊びですが、遊びに夢中になっている犬ほど気をつけたいのが水中毒です。
今回はどんな犬にも気をつけてほしい「水中毒」について、お話ししたいと思います。
■「水中毒」とは?
水中毒の正式名称は「低ナトリウム血症」です。水を摂りすぎることで体内のナトリウム(塩分)が大量の水で薄まり、ナトリウム濃度が低下し、体調不良を引き起こします。
特に暑い日には脱水になってはいけないと飼い主自身が無意識に犬に多量の水を摂取させていることもあり、場合によっては死に至る大変な症状です。
また、泳ぎが得意な犬が川や湖で溺れてしまう1つの原因ともいわれています。
■水中毒の症状
症状はすぐに出ないことがあり、帰宅してからおかしくなる場合もあります。以下のような症状が出たり、異常を感じたらすぐに病院を受診しましょう。
・歩行困難やふらつき
・嘔吐
・意識混濁
・痙攣や麻痺
・大量のよだれ
・意識障害からの昏睡
■水中毒の原因
水遊びの最中に起きることが多い水中毒。これには飼い主の不注意が原因になることが多くあります。
暑い日は熱中症の心配から「水遊びで体を冷やし、たくさんお水を飲んでいれば大丈夫」と思う人が多くいるのではないでしょうか。そんな時にやりがちなのが、水の中に何度もボールを投げて取りに行かせたり、ホースから水を流し、面白がってパクパクとキャッチさせたりする遊び。実はこれが水中毒の原因になってしまうのです。
水上のボールをキャッチするときや、ホースからキャッチした水を飲み込み、それを何度も行なっていると結果的に大量の水を摂取することになります。また、何かを咥えながら泳ぐ犬は水を飲んでしまうことが多いうえ、長時間泳がせるのは低体温にもつながります。水遊びの際には意図せず水を飲み込んでしまうような遊びに注意しましょう。
■犬に必要な水分量は?
平均的な犬の水分摂取量は体重1kgあたり50~60mlです。水を飲むことが好きな犬もいますが、それでも1日の摂取量が体重10kg程度で1lを超えると異常と判断されます。
8歳を超える老犬になると、ホルモン異常や腎臓疾患が原因で水を飲む量が増える場合もありますから、普段から水を飲みすぎる場合は老化と思わず、検査をしてみてください。
通常の摂取量分飲んだ上に水遊びでさらに水を飲んでしまうと過剰摂取となってしまいます。愛犬がどのくらいの水を飲んでいるのか確認しながら水遊びをさせるようにしましょう。適度の休憩が大切です。
■海水浴はさらに注意
海で泳がせるという飼い主も稀にいますが、海は海水なので、水中毒に加えて塩分の過剰摂取に注意が必要です。最悪な場合は高ナトリウム血症になってしまうこともありますので、口をパクパクしながら泳ぐ犬は気をつけましょう。
また、喉が渇くことで海水を飲みながら遊び続ける犬もいます。塩分の過剰摂取が続くと、心臓や腎臓に負担をかけてしまうため、海水浴はほどほどに。
犬の老化現象として心臓や腎臓機能が低下する傾向がありますから、若い頃から健康を損なわないようにしたいですね。
大好きな水遊びをしたために体調を崩してしまうのは、とても悲しいことです。犬自身はコントロールできないことなので、飼い主が遊ぶ時間や遊ばせ方をよく考えて、楽しい水遊びの時間を過ごしてください。
(医療監修:獣医師 先崎直子)
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