犬の肉球 大切な役割
2019.08.09 (老犬ケア)
老犬にとって大切な役割を果たす肉球。可愛くてプニプニとした形だけで癒される肉球ですが、靴を履かない犬にとってはとても痛めやすい場所でもあります。
肉球におきやすいトラブルや健やかに保つためのケアをまとめてみました。
■肉球の構造
そもそも肉球は何でできているのか?肉球の構造を説明しながら、肉球の役割を細かく説明したいと思います。
触ると柔らかい肉球ですが、外側は角質層が固くなった厚い皮膚で覆われています。人でいう「まめ」がもっと厚くなった層といえます。
内側は脂肪やコラーゲン繊維、エラスチンの弾性繊維などが混在した皮下組織から成り立ちます。犬の足先の骨を基礎としてそれらの組織が結合しています。
肉球は中心にある一番大きな「掌球」(後ろ足は足底球)、その上にある「指球」(後ろ足は趾球)、そして忘れがちな前脚の狼爪にも指球があり、指球や趾球の先に爪が生えています。
前足の手首あたりには、人の親指にあたる手根球があります。犬の足は親指以外の指だけでつま先立ちのように立っています。
肉球にはさまざまな神経や血管が集まっていて、触覚や温度、痛みなども感じる器官であり、「汗をかく」場所でもあります。汗腺が多くあるため、体温調整や緊張を感じた時などに汗をかきます。
■肉球の役割
肉球は何のためにあるのでしょうか?
肉球は犬の生活にとって大切な役割を果たしています。
[地面センサー]
人の指先と同様にとても繊細な探知機で地面の状態を感知する器官になっています。肉球がないと、犬は歩くことができないといわれているほどです。
地面の状態を確認するセンサーの役割があり、熱や冷たさから体を守ります。真夏の熱い地面を歩くときは固くて厚い角質で内部組織を守り、雪の中でも歩くことができるのは、肉球の中を通る静脈の血液が冷えても、近くの動脈で血液を温めて循環させることで、体温を守ることができるからです。
ただ、寒さに強い犬は暑さに弱い傾向があります。
[靴の役割]
厚い角質が靴の役割を果たし、ジャンプをした時は着地の衝撃を和らげ、走っているときはブレーキをかけるなど、滑り止めの役割を果たします。室内にいる時はフローリングで滑らないように滑り止めになります。また、以前は獲物を捕るため足音を消すこともできました。
老犬は室内にいることが多く、老化で肉球が固くなっていることもあるので、足腰を傷めないために弾力のある肉球を保つことが大切です。
肉球の厚さはライフスタイルで大きく変わります。室内で過ごす犬は肉球が柔らかく、屋外で生活したり、よく走り、スポーツをする犬は肉球の表面が固くなります。
■健康維持に欠かせない場所
靴を履かない犬にとって肉球のケアはとても大切です。地面と直接触れる場所で、汗や皮脂で汚れやすく、土壌に潜む破傷風菌にも感染しやすいことから、肉球や足裏の怪我には注意しましょう。
強い感染力を持ち、人にもうつる犬ジステンバーは鼻や肉球の皮膚が固くなるハードパッドという症状が現れるのが特徴です。
■肉球のトラブル
多く報告されるのは火傷です。夏のアスファルトや海岸、薬品(石灰)などを踏んでしまったことによる化学反応もあります。
肉球が腫れたり、黒ずみや赤みがある、水ぶくれができているなどの症状があれば、すぐに病院を受診しましょう。
また、遊びの最中に傷を負うこともあります。水遊びでふやけた肉球は切り傷ができやすく、ボール遊びや走りすぎでも、何度もブレーキをかけていると擦り傷ができてしまうほか、ジャンプでの着地は、小さな小石を踏んだだけでも衝撃で肉球が裂けてしまうことがあります。
遊ぶ場所や時間を考え、できるだけ肉球に負担をかけない遊び方を心がけてください。
■肉球のケア
散歩から帰ったら足を洗うことは当然ですが、濡れた状態をそのままにしていると雑菌が繁殖しやすくなります。しっかり乾かすことが重要で、皮膚の状態が悪化すると指間に炎症を起こし、かゆみの原因にもなります。指先の毛は短くカットして、清潔を保ち、濡れたらすぐに乾かすように心がけましょう。
かさついた肉球は傷ができやすいので、潤いを保つケアが必要です。ペット専用クリームなども手に入りやすくなりましたが、使用されている原材料や香料を調べ、良質のものを選びましょう。肉球は犬が舐めることもあるので、安全な専用クリームを選んでください。
人用のワセリンも活用できますが、滑りやすいので室内で使用する際は注意が必要です。やさしい肉球マッサージは血行がよくなり、老犬も喜ぶスキンシップです。
■まとめ
子犬の頃はお餅のように柔らかかった肉球も、老化とともに固くなり、ひび割れたり、ガサガサと乾燥してしまうことがあります。保湿力を自力で高めるのは難しいので、しっかりとケアしてあげましょう。
いつまでも健やかに散歩を楽しめるよう、足裏ケアにも気を配りたいですね。
(医療監修:獣医師 先崎直子)
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