「施設訪問記 夢楽」。【老犬ケア】

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施設訪問記 夢楽

2021.06.30 (老犬ケア)

KENNEL夢楽埼玉県本庄市の老犬ホーム「夢楽(ムラク)」を訪問し、オーナーの高柳さんご家族にお話を伺ってきました。

高柳さんはもともと奥様のご実家が秋田犬のブリーダーだったため、奥様が埼玉に嫁いでこられた時から35年以上に渡ってブリーディングをされてきました。
実は犬のブリーダーの業界では、子供が産めなくなった繁殖犬は外に里親に出されたり、処分されてしまったりということが当たり前になっている現実があります。自分のところで育てた犬は、生まれた時から一緒に過ごしてきた家族として最期まで自分たちで面倒をみてあげたいと、高齢犬のための施設を作ったのが老犬ホームを始めるきっかけになりました。

「多分、自分のところで産ませて最期まで看取ることができる施設というのは犬の世界ではうちが初めてだと思います。うちみたいなやり方は、周りからはお前のところは趣味だって言われます」というご主人様。「ブリーダーとして入るお金は老犬のお世話の方に回るという感じ。だからお金持ちには絶対なれませんね」と隣で奥様も笑います。
高柳さんは常に、犬が幸せに暮らせることを第一に考え、容姿を重視した医学的に良くない交配を避けているそうです。ケージレスでストレスフリーに過ごせる室内環境を作り、人間の暮らしに適応できる躾などを心がけています。ストレスの無い健康的な環境で育つため、そこで暮らす繁殖犬はみんな長生き。必然的に介護が必要になる期間も長くなります。

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年間60頭ほどの子犬が新しい家族へと引き取られていく中、多くの飼い主さんたちからの相談相手としても頼りにされている高柳さん。いつでも戻ってきて様子が見られるようにと、定期的に必要になるフード販売などの物販サービスで飼い主さんが気軽に訪れやすい環境を整えました。
飼い主さんたちが集まって、遊びにきた子たちが自由に走れるドッグランを作りたいと、売りに出ていた古家を改築して今の場所に移転してきたのが2020年の10月のこと。
それまで障害者施設で職員として働いていた高柳さんの息子さんが施設を退職し、老犬介護の方に本腰を入れたいという希望を取り入れ、ペットホテルやトリミング、保育園、老犬ホームのサービスを備えた現在の施設になりました。

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介護サービスの中心になっているのは息子さん。トリマーの資格も保有していて、リスクが高く一般のサロンでは断られがちな老犬のシャンプーやトリミングを得意とされています。
「息子は夜鳴きとか徘徊とか、そういう人間にとって困ったと思われる行動が本当に可愛いと思えるみたいで。いつも悲壮感無く明るく介護しているのがすごいと思います」とご両親からも太鼓判を押されていました。
犬も人間も介護方法に大きな違いはなく、歩ける子はお散歩に出して筋力の低下を抑えるようにしたり、子犬と一緒に過ごして刺激を与えたりして、必要以上にお年寄り扱いをしないようにしているそうです。

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「もともと自分の家の高齢犬を見るために施設を作りましたが、他所のワンちゃんも同じようにお世話ができれば、飼い主さんが耐えきれずに保健所に連れて行かれちゃう子が1頭でも減るんじゃないかなと思って」と始められた老犬ホーム。
生まれてへその緒を切ってから、最期を看取るまで、何百頭という犬の人生すべてにかかわってきた経験は、悩みを抱える飼い主さんにより近い場所で寄り添える大きな強みだといいます。

最後にこのコラムの読者さんへ、介護施設を頼ることに罪悪感をもつ飼い主さんには、自分を責めないで欲しいというメッセージを頂きました。
自分の家族の一員である愛犬のことを真剣に考えた結果として施設に預けることになっても、預かる側はその思いを受け止めて、飼い主さんと同じように、またそれ以上に愛情を持って余生を過ごさせてあげたいという高柳さんご一家。
「飼い主さんからは若い時のワンちゃんのお話を聞いたりできれば、こうやって頑張ってここまで来たんだねって自分の子供のように寄り添って大切にできると思います。お話しできる飼い主さんだったらぜひ色々お話ししたいですね」と語ってくださいました。

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