寝たきり・床ずれ(褥瘡)への対応
足の力が弱くなったり、椎間板ヘルニア等の疾患がある場合、寝たきりになることがあります。
老犬の場合、短時間で床ずれ(褥瘡)の症状がでることが多いので、寝たきりになった場合は、常に皮膚を注意深く観察し、予防と、早期発見に努めることが大切です。
(医療監修:獣医師 先崎直子)
介護例1 自力で歩けない
老犬になると、脚力が落ち、ほとんど歩けなくなるケースがあります。
この場合もハーネスで補助する、カートに乗せるなどして、できる限り散歩を続けてください。愛犬の気分転換になります。
歩けなくなっても、立ち上がるのを補助してあげると、外ではちゃんと歩くケースもあります。
老犬は日により体調や気分が変わります。
歩けないからといって散歩をやめてしまうと、脚力低下に拍車がかかり、愛犬の健康寿命を縮めてしまいので、できるだけ散歩は続けてください。
逆に、筋力が無くなっているのに散歩に行きたがり、足先を路面に引きずるなどして怪我をしてしまう場合があるので、犬用の靴を履かせたり、タオルで足先をくるんでから散歩に出るなどの工夫も必要です。
介護例2 自力でご飯が食べられない
まずは病気を疑い、早めに獣医師に相談しましょう。
寝たきりなど、極端に体力が落ちた場合も、自分で食事(ご飯)が食べられなくなることがあります。
この場合、流動食で栄養補給させる方法があります。流動食は市販品もありますが、ドッグフードをすり潰し、水と混ぜた流動食を作ることもできます。
食事を与えるときは、市販の注射器に流動食をいれて、口の中に流し込んであげます。
流動食を与える際は、犬の頭を立てると(立っている時と同じ向きにすると)、ご飯の逆流、気管への入り込みを防げます。
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普段はおとなしい老犬でも、強いストレスを抱えている可能性が高く、噛まれたりするケースもあります。
流動食を与えるときは、十分に注意してください。
流動食は少しずつあげ、嫌がるようであれば、無理に流し込まないでください。
窒息する可能性があり、大変危険です。
介護例3 自力で排泄できない
老犬になり筋力が落ちてくると、自分で排泄ができなくなることがあります。このような場合は、トイレの時に愛犬が排泄姿勢を保つことができるよう、飼い主が体を支えてあげるようにします。
どうしても自力でトイレができない場合、マッサージや圧迫で排泄を促します。
犬の種類や個性によって、効果的な圧迫方法が違ってくるので、獣医師の指導を仰ぎながら、適切な圧迫方法を覚えましょう。
それが愛犬の負担軽減につながります。
自分でトイレができなくなってしばらくは、愛犬自身も戸惑いがあり、飼い主がサポートしても、トイレをしないケースがあります。根気よく付き合いましょう。
愛犬が嫌がるようであれば、一度やめて時間を置き、改めてサポートしてください。
介護例4 寝たきりの介助
関節が固まらないよう、無理のない範囲で体を動かしてあげましょう。
体をさするなど軽いマッサージも血行を良くするので効果的です。
一度寝たきりになっても、立てるようになりこともあるので、あきらめず介護をしてあげてください。
愛犬自身が立とうとしているようであれば、立てるよう補助するなど、訓練をしても良いです。
介護例5 床ずれ(褥瘡)の予防
床ずれはマットや床と長時間、愛犬の体が接し、圧迫されることにより血流が悪くなり、皮膚や筋肉が死んでしまった状態です。
長時間、体の同じ場所がマットや床などで圧迫されることを防げば、予防可能です。
■予防法は以下の通りです
1.圧迫を軽減することも大事ですが、より重要なのは清潔に保つことです。排泄物はすぐに取る、愛犬の体に付いてしまった場合はすぐに優しくふき取るってください。
2.体圧分散マットを用意し、愛犬が横になっている時に一か所に体重が集中しないようにします。
3.愛犬の体を触って骨を感じるところで、寝ている時に床と接する部分が床ずれしやすい部分です。パット(人間用のものの代用で構いません)などで保護してください。足の関節等はタオルを巻くなどして、直接、骨同士があたらないようにしましょう。
4.2時間程度を目安に体位の変更(寝返り)をさせてください。ただし、愛犬の体重や皮膚の状態やマットの素材で、体位変更の時間は変わりますので、皮膚の状態を良く見ながら、時間を調節してください。体位変更を嫌がる場合、体位はそのままでも軽く持ち上げるようにサポートするだけでも、血流が回復し、一定の効果はあります。体位変換はできるだけ背中が上になるようにしてください。お腹を上にして回すと内臓に負担がかかることがあります。
5.皮膚に負担がかからないよう、引きずったり、こすったりしないようにしましょう。
■床ずれ(褥瘡)のできやすい場所
肩、肘、腰、かかとなど筋肉が薄く、横になった時に骨が床に強くあたる場所が床ずれのできやすい場所です。
クッション等で圧迫を軽減するとともに、皮膚の状態を注意深く観察しましょう。
■床ずれ(褥瘡)のサイン
床ずれ(褥瘡)はあっという間にできることがあります。
常に皮膚の状態を観察するようにしましょう。
皮膚が赤くなる、ジクジクする、毛が分泌物でべたべたしてきた、などの症状は床ずれ(褥瘡)の始まりかもしれません。
できれば周囲の毛を刈って、床ずれ(褥瘡)ができていないか確認しましょう。
毛が刈れなくても、毛をかき分けるようにして皮膚を直接観察するようにしましょう。
介護例6 床ずれ(褥瘡)の治療
状態によって対応が変わるので、獣医師に相談することをお勧めします。
ここでは自宅で対応可能な方法を記載しますが、状態が良くならない場合は獣医師に相談してください。
■床ずれの治療は以下の通りです。
1.清潔を保つため屋外犬の場合も、可能であれば屋内にいれてあげてください。
2.同様に床ずれの周りが汚れないよう、嫌がらないようであれば、毛を刈りましょう。
3.傷口と周囲を水道水できれいに水洗いし、水気を取ります。
4.傷口を乾かさないことが重要です。傷口をラップで覆い、まわりをテープで固定します。この際に一部はテープで固定せず空けて、体液が排出できるようにしておきましょう。(湿潤療法)
5.ラップがずれてしまうようであれば、布や包帯などで全体を固定してあげるようにします。
床ずれは早期治療が重要です。
放っておくと最悪の場合、傷口にウジなどが発生するケースもあります。
皮膚が赤い、水ぶくれができた、毛が抜けたなどの症状がでた場合、早めに獣医師に相談してください。
介護例7 床ずれ(褥瘡)にウジがわいてしまった
ただちに獣医師に診せることをお勧めします。
どうしても自宅で介護する場合、ピンセットでウジをすべて取り除いた後、介護例6にしたがって、水道水で傷口をきれいにし、様子を見てください。